宇都宮大学工学部平田研究室のホームページです。

Hirata Laboratory

オープンキャンパスプロジェクト2023

リアクションホイール(桑鶴・高野・立見・宮田)

目次

はじめに
構造
実機
制御

はじめに

平田研究室では,2023年7月17日に行われた宇都宮大学オープンキャンパスにて,Arduinoと3Dプリンタを用いたデモンストレーションを行いました.本プロジェクトでは,デモンストレーションを通して制御を目に見える形で表現し,制御の楽しさや凄さを来場者に伝えることを目的としています. 今回我々は,「リアクションホイール」という制御対象に「最適レギュレータ」という制御手法を適用することで,倒立制御のデモンストレーションを行いました.

構造

リアクションホイールとは,モータを使用して「重心を中心に向きを変える」ことを実現する制御装置で,無重力空間での姿勢制御などに応用されています.画像はJAXAの3軸リアクションホイールで,モータを用い円盤(ホイール)を回転させることで,回転方向とは逆向きに発生する反力を利用し姿勢制御を行います.無重力空間ではスラスターによる姿勢制御も可能ですが,リアクションホイールはモータ駆動であり,燃料ではなくソーラーパネルから得た電力で制御が可能なため,長期間運用される人工衛星などに適した機構です.また,画像はXYZの3軸に対応した計3面のモータとホイール機構が存在するもので,それぞれの軸をうまく制御することで箱を倒立させています.

画像1

このような3軸のリアクションホイールの実機作成や倒立制御はかなり難しいので,今回はより簡易的な1軸リアクションホイールでのデモンストレーションを行いました.

実機

作成した1軸リアクションホイールを以下に示します.全体が一つの振子となっており,中心に据えられたリアクションホイールで倒立制御がなされます.振子の回転軸を固定するベアリングは市販のものを使用し,その他の筐体に関しては3Dプリンターを用いて作成しました.

画像2

制御はArduino mega2560を⽤いて⾏いました.Arduinoとは,イタリアで開発されたオープンソースのハードウェアであり,必要最⼩限の知識でプログラミングできることが特徴です.このArduinoを数値計算,シミュレーションを行えるMATLAB/Simulinkと連携することで制御系設計をしました.制御系では,リアクションホイールの回転軸,振⼦の回転軸に搭載されているの磁気エンコーダーで測定できた情報をもとに,最適な制御電圧を計算しモータを駆動します.

画像3

制御

制御のフローは以下のようになっています.センサから取得可能な①ボディ(振子)の角度,②ホイールの角度とそれらを微分したもの,合わせて4つの変数(状態量)があり,それぞれに対して適切なゲイン(定数で,状態フィードバックゲインという)をかけ合わせたものの和が,最適な制御入力(指令電圧)となります.このように,制御対象の状態量それぞれにゲインをかけ合わせ,制御入力とする手法を「状態フィードバック」といいます.また,この際に適切なゲインを設定する必要がありますが,そのゲインの計算には「最適レギュレーター」と呼ばれる手法を用いています.

画像4

今回は,倒立状態で全ての状態が0になると考え,以下のリアクションホイールの運動方程式に対して最適レギュレーターを解くことで状態フィードバックゲインを決定しました.最適レギュレーターを解く場合,リカッチ方程式の正定解を求める必要がありますが,MATLABのControl System Toolboxをお持ちの方は,lqr関数を使用することで容易に求めることができます.

画像5

また,今回の制御の工夫として,以下の図のように角度に応じて制御動作を分けています.任意の角度を閾値として安定化領域と起き上がり領域を設定し,一定時間以上起き上がり領域にいる場合には,自動で起き上がり動作に切り替わるようになっています.Simulinkで構築した制御系は,Run on Target Hardware(RoTH)という機能を用いてArduinoに書き込むことで,スタンドアローンでこれらの動作が⾏われます.

画像6

△Page Top